火傷を負って曹操の意識はもうろうとしていた。
典韋は鎧をボロボロにされながら、曹操をかばって活路を見い出そうと、
自分の感覚の全てを鋭利な刃物のように鋭く尖らせて、敵の気配を捜した。
典韋は曹操の体のやけどを冷やすために、曹操のマントを水につけ、
さらに、自分の主人が馬から振り落とされないよう、そのマントで自分と曹操の体をしばりつける。
炎の中に活路を求めて、典韋は馬の腹を強く蹴った。
槍と剣がはせ合う音、兵士達の悲鳴や怒声、それら一切の戦の音は、曹操の耳には届かない。
ただひたすら、赤子のような無心さで、典韋と自分を結び付ける赤い布を握りしめていた。
耳もとに、猛々しい武者の息遣いを聞きながら、赤い布を握りしめる自分の手を見つめていた。
『この手を離さなければ大丈夫…。この手を離さなければ、生き延びられる』
一歩間違えれば、死の淵にあると言っても過言ではないような敗戦の最中、曹操は不思議な安堵感につつまれていた。


炎からの脱出―典韋と曹操― 2003.2.10up


白牡丹さまからいただきました。
ぐおーっです。
どっひゃーです。
素晴らしすぎる力作に、思わず目を疑って
しまいました。
呂布との戦いで火攻めに遭った曹操軍。
典韋は、火傷を負い馬を失った君主曹操を救い出し、
炎の城を脱出する……
傷ついた殿が激しく萌えなのです!
燃え→萌えなのです!!

ちなみに、イメージの文章も白牡丹さまのものですv